はじめに
アストンマーティン ヴァリアントは、ただの限定モデルではありません。
F1ドライバーのフェルナンド・アロンソ選手の要望から生まれ、「走るための性能」を徹底的に突き詰めた、極めて特別な一台です。
V12エンジンと6速マニュアルという今では貴重な組み合わせに、サーキット走行を前提とした空力設計や軽量化。
ラグジュアリーを重視する従来のアストンマーティンとは一線を画し、ドライバーがクルマを操る楽しさを最優先に作られています。
この記事では、そんなヴァリアントの魅力を「開発背景」「エクステリア」「インテリア」「パワーと性能」という視点から、わかりやすく解説していきます。

アストンマーティン ヴァリアントの開発背景

そもそもの始まりは「個人的な要望」
ヴァリアントは、最初から市販モデルとして企画されたクルマではありません。
きっかけは、F1ドライバーのフェルナンド・アロンソ選手による個人的なリクエストでした。
「ヴァラーを、もっと軽く、もっとレーシングカー寄りにしたクルマが欲しい」
この一言が、すべての始まりです。
ベースは110周年記念モデル「ヴァラー」

写真:アストンマーティン「ヴァラー」
開発の土台になったのは、アストンマーティン創立110周年を記念して作られた ヴァラー(Valour)。
クラシックな雰囲気とV12エンジン、6速MTを組み合わせた特別なモデルですが、ヴァリアントはそこからさらに踏み込んでいます。
- より軽量に
- より速く
- よりサーキット志向に
という方向へ大きく振り切ったのがヴァリアントです。
開発を担ったのは「Q by Aston Martin」
この特別な要望を形にしたのが、アストンマーティンの特注部門「Q by Aston Martin」。
内装のカスタムだけでなく、設計や性能面まで深く関わる部門だからこそ、「ほぼワンオフに近いレベルの特別仕様車」が実現しました。
開発テーマはとてもシンプル
ヴァリアントの開発コンセプトは、次の3つに集約されます。
- もっとパワフルに
- もっとダウンフォースを増やす
- もっと軽くする
つまり、ラグジュアリー性よりも「走るための性能」を最優先したクルマです。
公道を走れるクルマでありながら、考え方はほぼレーシングカーに近いと言えます。
世界限定38台という特別な存在
ヴァリアントは 世界でわずか38台限定。
この台数も、レースの歴史に由来する意味を持たせた数字とされています。
単なる「台数限定」ではなく、背景・物語・性能すべてが特別なクルマとして位置づけられています。
まとめ|ヴァリアントとはどんなクルマ?
アストンマーティン ヴァリアントは、
- F1ドライバーの要望から生まれ
- ヴァラーをベースに
- Q by Aston Martinが本気で作り込み
- 公道OKなのにサーキット性能を極限まで高めた
- 世界38台限定の超特別モデル
という、「走りに全振りしたアストンマーティン」です。
通常の限定車とは一線を画す、“クルマ好きの夢をそのまま形にした一台”と言える存在です。
アストンマーティン ヴァリアントのエクステリア

全体デザイン|「美しさ」よりも「走るための形」
ヴァリアントのエクステリアは、従来のアストンマーティンが持つ優雅さやラグジュアリー感よりも、走行性能を最優先してデザインされています。
一目でわかるのは、「これは特別なアストンマーティンだ」という圧倒的な迫力と緊張感です。
見た目の派手さではなく、すべてに意味がある造形になっています。
フロントデザイン|空力性能を強く意識

フロント周りは、通常モデルよりもかなり攻撃的です。
- 大型化されたフロントスプリッター
- 開口部の大きいエアインテーク
- ダウンフォースを生むための立体的な造形
これらは見た目の演出ではなく、高速走行時にフロントを路面に押さえつけるための実用的な設計です。
特に低いノーズと張り出したスプリッターは、サーキット走行を前提にしたクルマであることを強く主張しています。
サイドビュー|筋肉質で無駄のないシルエット

横から見ると、ヴァリアントは非常に筋肉質です。
- フロントからリアへ流れる力強いボディライン
- タイヤを強調する張り出したフェンダー
- 車高の低さが際立つプロポーション
クラシックなアストンマーティンの雰囲気を残しつつも、よりレーシングカーに近い緊張感が加えられています。
リアデザイン|最大の特徴は大型リアウイング

ヴァリアントの外観で最も目を引くのが、巨大な固定式リアウイングです。
- 高速域で強力なダウンフォースを発生
- サーキットでの安定性を大幅に向上
- 見た目以上に「機能重視」の設計
このリアウイングの存在により、ヴァリアントは「コレクターズカー」ではなく本気で走れるクルマであることが一目でわかります。
リアディフューザーも大型化され、空気の流れを整えることでコーナリング性能を高めています。
素材と軽量化|見えない部分まで本気
ヴァリアントのエクステリアでは、軽量化も重要なテーマです。
- カーボンファイバー素材を多用
- 不要な装飾を極力排除
- 「軽さ=速さ」という考え方を徹底
そのため、派手なメッキや装飾的な要素は控えめで、機能がそのままデザインになっているのが特徴です。
まとめ|ヴァリアントの外装が特別な理由
アストンマーティン ヴァリアントのエクステリアは、
- 美しさよりも走行性能を優先
- 空力・軽量化を徹底的に追求
- 大型リアウイングを備えた本格サーキット志向
- 見た目のすべてに「意味」がある設計
という、アストンマーティンの中でも異例なほどストイックな外観です。
「見せるためのデザイン」ではなく、走るために作られたアストンマーティン――それがヴァリアントのエクステリア最大の魅力です。
アストンマーティン ヴァリアントのインテリア

全体の考え方|ラグジュアリーより「運転に集中」
ヴァリアントのインテリアは、一般的なアストンマーティンの豪華で優雅な室内空間とは方向性がまったく異なります。
テーマは一貫して
「ドライバーが走りに集中できること」。
快適性や装飾よりも、操作性・軽量化・一体感が最優先されています。
シート|身体を固定するレーシング仕様

シートは、見た目からして通常モデルとは別物です。
- 体をしっかりホールドするスポーツバケット形状
- サーキット走行時でも姿勢が崩れにくい設計
- 軽量化を意識した構造
座り心地は「ふかふか」ではありませんが、クルマと体が一体になる感覚を重視しています。
ステアリング|操作感を最優先した設計

ステアリングは、余計な装飾を排除したシンプルかつ実用的なデザイン。
- 太めでしっかり握れる形状
- 操作に不要なスイッチ類は最小限
- ダイレクトな操舵感を重視
ドライバーの意思が、そのままクルマに伝わるような「操る感覚」を強く意識した作りです。
内装素材|軽さと質感のバランス
ヴァリアントの内装では、カーボンファイバーやアルカンターラ系素材が多く使われています。
- 見た目はスパルタン
- 触れる部分はしっかり高級感あり
- 無駄な装飾は徹底的に省略
派手さはありませんが、“本気のクルマ”らしい質感が随所に感じられます。
操作系・装備|必要最低限だからこそ分かりやすい

インテリア全体の装備は非常にシンプルです。
- 操作系はドライバー中心に配置
- 不要な快適装備は極力省略
- 走行に直接関係しない要素は控えめ
これはコスト削減ではなく、軽量化と集中力向上のための意図的な選択です。
雰囲気|「特別感」と「緊張感」が共存
ヴァリアントの室内に乗り込むと感じるのは、
- 高級車らしい特別感
- レーシングカーのような緊張感
この2つが同時に存在している点です。
くつろぐための空間ではなく、エンジンをかける前から気持ちが引き締まる室内と言えます。
まとめ|ヴァリアントの内装が示すもの
アストンマーティン ヴァリアントのインテリアは、
- 快適性より運転への集中を重視
- 軽量化と操作性を徹底
- レーシングカーに近い思想で作られた室内
- それでもアストンらしい上質さは残す
という、走りに本気な人のための内装です。
「豪華さを楽しむアストンマーティン」ではなく、“操ることを楽しむアストンマーティン”――
それを最も強く体現しているのが、ヴァリアントのインテリアです。
アストンマーティン ヴァリアントの「パワーと性能」

エンジンの基本性能
ヴァリアントの心臓部は、アストンマーティンが誇る 5.2リッター V12 ツインターボエンジン です。
このエンジンは、レーシングや高性能車向けに設計されたもので、力強く滑らかな加速と高回転域まで豊かなパワーを発生します。
- 最高出力:745PS(約745馬力)@ 6,500rpm
- 最大トルク:753Nm(ニュートンメートル)@ 5,500rpm
- 排気量:5,203cc
- 加給方式:ツインスクロール・ターボチャージャー
- 燃料供給:ガソリン直噴
- バルブ機構:DOHC(可変バルブタイミング)
この数値は、ヴァリアントの 「公道走行可能な車としては非常に高い性能」 を示しています。
多くの一般的なスポーツカーの数値を大きく上回るパワーです。
トランスミッションと駆動方式

ヴァリアントのもうひとつの大きな特徴は、6速マニュアルトランスミッションを搭載していることです。
スポーツカーでも多くは自動変速(DCTや8速ATなど)を採用しますが、ヴァリアントは ドライバーの操作感を最優先にするためにマニュアルを選択しています。
- トランスミッション:6速マニュアル(手動)
- 駆動方式:後輪駆動(RWD)
- 機械式LSD(リミテッド・スリップ・デフ)搭載
→ コーナリング時の駆動力配分を最適化し、安定した走りを実現します。
ドライブモード(走行モード)
ヴァリアントには、走行環境に応じて選べる3つのモードが用意されています:
- Sport
- Sport+
- Track(サーキット)
これにより、街中では扱いやすく、サーキットではより鋭いレスポンスを引き出すことができます。
パフォーマンス数値(加速・最高速)
公式には詳細な加速タイムなどの数値が公開されていませんが、745PSという 極めて高い出力と手動ミッションの組み合わせから、0-100km/h加速はおそらく3秒台前半、最高速は 320km/h(200mph)以上 と予想されます。
※実際の加速性能は公開されていませんが、同等出力のスーパーカーと同等以上の性能が期待できます。
シャシー・足回りの性能補強
ヴァリアントは単にパワーが高いだけではなく、走行性能全体を高める設計が施されています:
- レース由来のダンパー(ASV:アダプティブ・スプール・バルブ)
→ 路面状況やドライバーの操作を瞬時に感知し、最適な減衰力を制御します。 - 軽量化パーツの採用
→ カーボンホイール、マグネシウム製部品、軽量バッテリーなどにより、バネ下重量と総重量を低減。 - カーボンセラミックブレーキ(410mm前 / 360mm後)
→ 強力な制動力を持ち、熱による性能低下(フェード)を防ぎます。
サーキット走行にも耐える構成
ヴァリアントは見た目こそ公道カーですが、サーキット走行を念頭に設計されています。
エアロダイナミクス(空力)、軽量設計、サスペンションとブレーキの強化を組み合わせることで、
- コーナリング安定性
- 高速直進安定性
- 制動性能
のすべてを高いレベルで実現しています。
まとめ|ヴァリアントの力強さの核心
アストンマーティン ヴァリアントは、
- 745PS/753Nmのツインターボ V12 が生む圧倒的なパワー
- 6速マニュアル+後輪駆動 という「本物のスポーツ体験」
- 選べる走行モード と 競技用レベルの足回り・ブレーキ
- 軽量化パーツによる戦闘力の底上げ
という構成で、
「速さだけでなく、走りの質まで極めたスポーツカー」になっています。
単純なハイパワー車ではなく、ドライバーの意思がそのまま動きに反映される、走る喜びを最大化した1台です。
ギャラリー































さいごに
アストンマーティン ヴァリアントは、
F1ドライバーの個人的な要望から誕生した特別モデル
ヴァラーをベースに、走行性能を極限まで高めた仕様
V12ツインターボ+6速マニュアルという“走り重視”の構成
公道を走れるのに、思想はほぼレーシングカー
世界限定38台という圧倒的な希少性
これらすべてを兼ね備えた、「走りに本気なアストンマーティン」です。
美しさや快適性よりも、ドライバーの感覚や操作性を優先する姿勢は、現代のスポーツカーの中でも非常に珍しい存在と言えます。
ヴァリアントは、速さだけでなく「運転する喜び」を大切にする人のために生まれた、特別なアストンマーティンです。






