はじめに
数値や最新技術だけを追い求めたスーパーカーが増える中で、「運転する喜び」そのものに真正面から向き合った1台が、デ・トマソ P72です。
クラシックレーサーの美しさを受け継いだエクステリア、デジタルを排したアナログなインテリア、そしてV8エンジンとマニュアルトランスミッションによる純粋な走り。
P72は速さを誇示する存在ではなく、クルマを操る時間そのものを特別な体験に変えるスーパーカーとして誕生しました。この記事では、そんなP72の魅力をわかりやすく解説します。
デ・トマソ P72のエクステリア

デ・トマソ P72のエクステリアは、1960年代レーシングカーの美しさを、現代技術で完全に再構築したデザインが最大の特徴です。流行を追わず、「永く美しいクルマ」を目指した造形になっています。
クラシックレーサーへの強いオマージュ
P72の外観は、1965年のレーシングカー デ・トマソ P70 から強い影響を受けています。
- 丸みを帯びたフェンダー
- 低く構えたノーズ
- 滑らかに流れるボディライン
これらはすべて、当時の耐久レースカーを思わせる要素です。直線的で攻撃的な現代スーパーカーとは異なり、曲線美を最優先したデザインになっています。
フロントデザイン|低く、優雅で力強い表情

フロント周りは非常に低く、地面に吸い付くようなスタンスが特徴です。
- 楕円形のヘッドライトはクラシックカー風
- 大型グリルを使わず、クリーンで上品な顔つき
- エアインテークは必要最小限に抑えられている
派手さよりも「造形の美しさ」を重視しており、見る角度によって印象が変わるのもP72ならではです。
サイドシルエット|芸術品のような流線形

横から見たP72は、特に評価が高いポイントです。
- フロントからリアまで一筆書きのようなライン
- 張り出したリアフェンダーが力強さを演出
- キャラクターラインを極力使わない立体的な面構成
空力性能のための形状でありながら、空力を感じさせない美しさがあり、「走る彫刻」とも言えるデザインです。
リアデザイン|機能美を極めた後ろ姿

リアは派手なウイングなどを持たず、非常にシンプルです。
- 丸型テールランプを左右に配置
- エンジンを見せるスケルトン風のリアカバー
- ディフューザーも控えめで上品
ダウンフォースを主張するのではなく、自然なボディ形状で空力を作る設計思想が感じられます。
ボディ素材と仕上げ|完全カーボンモノコック
P72のボディは、シャシーから外装まで一体成型のカーボンファイバーを採用しています。
- 継ぎ目のない美しい曲面
- 高い剛性と軽量化を両立
- 職人による手作業仕上げ
塗装も深みのあるクラシックカラーが中心で、光の当たり方によって表情が変わるのが魅力です。
エアロデザインの考え方|「見せない空力」
P72は、いかにも速そうなエアロパーツを使いません。
- 大型リアウイングなし
- 派手なスプリッターなし
- ボディ全体で空気を整える設計
その結果、クラシックなのに現代スーパーカー並みの性能を実現しています。
まとめ|P72のエクステリアは「時代を超える美」
デ・トマソ P72のエクステリアは、
- クラシックレーシングカーの魂
- 現代の素材と空力技術
- 流行に左右されない造形美
これらを高次元で融合した、見るだけでも価値のあるスーパーカーです。
速さを誇示するのではなく、「美しく走る」ことを体現した1台と言えるでしょう。
デ・トマソ P72のインテリア

デ・トマソ P72のインテリアは、最新スーパーカーとは真逆の思想で作られています。
キーワードは「アナログ」「機械美」「ドライバー中心」。画面に頼らず、触れて・感じて・操る楽しさを最優先した空間です。
コンセプト|デジタルを排した“操るための空間”
P72の室内に入ってまず驚くのは、大型ディスプレイがほぼ存在しないことです。
- タッチパネル最小限
- 物理スイッチとダイヤル中心
- 視線移動を極力減らした配置
現代的な便利さよりも、運転に集中できることを何より大切にしています。
コックピット|まるで60年代レーサーのような雰囲気
運転席は、ドライバーを包み込むような設計です。
- センターに並ぶアナログメーター
- 金属削り出しのスイッチ類
- メーター文字や針のデザインまでクラシック調
夜間に点灯するメーターは、まるでヴィンテージの航空機やレーサーカーのような美しさがあります。
ステアリング|余計なものは一切なし
ステアリングは非常にシンプルです。
- 操作系は最小限
- 触り心地の良いレザー仕上げ
- 運転に集中できる太さと形状
最近のスーパーカーに多い「ボタンだらけのハンドル」とは対照的で、操舵そのものを楽しむ設計です。
シート|美しさとホールド性を両立
シートは一体感のあるスポーツタイプ。
- カーボンベースの軽量構造
- 高級レザーを贅沢に使用
- 身体を自然に支えるホールド性
長距離よりも「走る時間の濃さ」を重視し、姿勢が自然に決まる作りになっています。
センターコンソール|P72最大の見どころ
P72の内装で特に印象的なのが、センターコンソールの造形美です。
- 金属パーツを多用した立体構造
- シフトリンケージを“見せる”デザイン
- 芸術品のような存在感
単なる操作部ではなく、眺めて楽しめる工業デザインとして完成されています。
素材と質感|徹底した本物志向
内装に使われる素材は、すべてが上質です。
- 本革(ステッチまで丁寧)
- アルミや真鍮などの金属素材
- カーボンファイバー
プラスチック感はほぼなく、手に触れるたびに満足感がある仕上がりです。
快適装備について|必要最小限の割り切り
P72はラグジュアリーカーではありません。
- 先進運転支援は控えめ
- インフォテインメントも最小限
- 快適性よりドライビング重視
その代わり、「エンジン音」「操作感」「振動」といった、クルマ本来の魅力がしっかり味わえます。
まとめ|P72のインテリアは“走るための芸術”
デ・トマソ P72のインテリアは、
- デジタルに頼らないアナログ操作
- 1960年代レーサーの精神を現代化
- 見て、触って、操る楽しさを重視
という思想で作られた、今では非常に貴重な空間です。
便利さよりも「クルマを運転する喜び」を求める人にとって、P72の内装は間違いなく特別な存在と言えるでしょう。
デ・トマソ P72のパワーと性能

デ・トマソ P72の走りは、数字の速さより「運転の濃さ」を重視して作られています。
最新スーパーカーのようなハイブリッドや電動化は採用せず、純粋なV8エンジンとマニュアル操作にこだわった点が最大の特徴です。
エンジン|官能性を重視したV8スーパーチャージャー
P72に搭載されるのは、5.0リッターV8スーパーチャージャーエンジンです。
- アメリカ製V8をベースに専用チューニング
- 出力は約700馬力前後
- トルクは約820Nmという強大な数値
高回転型というより、低回転から力強く盛り上がるタイプで、アクセルを踏んだ瞬間に分厚いトルクを感じられます。
トランスミッション|あえて6速マニュアルを採用
P72は、現代スーパーカーでは珍しい 6速マニュアルトランスミッションを採用しています。
- パドルシフトなし
- クラッチ操作とシフトワークが必須
- ドライバーの操作が走りに直結
速さだけならDCTの方が有利ですが、P72は**「操る楽しさ」を最優先**。
エンジン音と回転数を感じながらギアを選ぶ、濃密なドライビング体験が味わえます。
駆動方式|後輪駆動(FR)にこだわる理由
駆動方式は後輪駆動(FR)。
- 前後重量配分に優れる
- ステアリング操作が素直
- 加速時の挙動がわかりやすい
四輪駆動のような安心感よりも、クルマと対話する感覚を重視した構成です。
シャシーとボディ|軽さと剛性の両立
P72は、カーボンファイバー製モノコックシャシーを採用しています。
- 高い剛性で正確なハンドリング
- 車重は約1,400kg台と軽量
- エンジンパワーを無駄なく路面に伝達
この軽さが、700馬力という数値以上の鋭い加速感と反応の良さにつながっています。
サスペンション|快適さより“路面との対話”
サスペンションは、走り重視のセッティングです。
- ダブルウィッシュボーン式
- 調整式ダンパーを採用
- 路面情報がダイレクトに伝わる
乗り心地は決してソフトではありませんが、クルマの動きが手に取るようにわかるのが魅力です。
最高速・加速性能の考え方
P72は、公式に派手な数値を強調していません。
- 0-100km/h加速よりも中間加速重視
- 最高速よりドライバビリティ重視
「最速」を競うスーパーカーではなく、走らせる時間そのものを楽しむための性能に振り切っています。
電子制御|必要最小限の介入
電子制御も控えめです。
- トラクションコントロールは最小限
- ドライバーの腕が問われる設定
- それでも安全性はしっかり確保
現代的な“守られた速さ”ではなく、自分で操る責任と楽しさが共存しています。
まとめ|P72の性能は「体感重視のスーパーカー」
デ・トマソ P72のパワーと性能は、
- V8×マニュアルという希少な組み合わせ
- 軽量ボディによる鋭いレスポンス
- 電子制御に頼らない運転体験
これらによって、数値以上に記憶に残る走りを実現しています。
速さを誇示するスーパーカーではなく、運転好きのための“本物の1台”と言えるでしょう。
ギャラリー






デ・トマソ P72 コンセプト(2019年)






さいごに
デ・トマソ P72は、
1960年代レーシングカーへのオマージュを感じさせる美しいデザイン
デジタルに頼らず、操作感を重視したインテリア
V8エンジン×6速マニュアルによる濃密なドライビング体験
これらを高いレベルで融合させた、今では非常に貴重な存在のスーパーカーです。
最先端装備やタイムアタック性能ではなく、「運転する楽しさ」「所有する満足感」を重視する人にとって、P72は間違いなく特別な1台と言えるでしょう。
速さよりも、心を動かすクルマ。
それが、デ・トマソ P72です。






