GRヤリスの概要
トヨタ「GRヤリス」は、世界ラリー選手権(WRC)での勝利を目指して開発された、モータースポーツ直系の本格スポーツカーです。
2020年に登場し、2024年には大幅なマイナーチェンジを受け、さらなる進化を遂げました。
主な特徴
- 専用開発のボディとプラットフォーム
GRヤリスは、ヤリスの名を冠していますが、実際には専用のプラットフォーム(前:GA-B、後:GA-C)を採用し、3ドアハッチバッククーペとして設計されています。WRC参戦を前提としたホモロゲーションモデルとして、軽量かつ高剛性のボディが特徴です。 - 高性能エンジンと駆動方式
1.6L直列3気筒インタークーラーターボエンジン(G16E-GTS)を搭載し、最高出力224kW(304PS)、最大トルク400Nmを発揮します。駆動方式は4WD(GR-FOUR)を採用し、卓越した走行性能を実現しています。 - トランスミッションの選択肢
6速iMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)に加え、2024年モデルからは新開発の8速AT「GR-DAT(GAZOO Racing Direct Automatic Transmission)」が追加され、より多くのドライバーがスポーツ走行を楽しめるようになりました。 - 進化したインテリアと装備
ドライバーファーストの考えに基づき、12.3インチのフルTFTメーターや、操作性を高めたコックピットデザインを採用。着座位置の低下や視界の改善など、細部にわたる改良が施されています。
グレード展開と価格(2025年5月現在)
グレード | 駆動方式 | トランスミッション | 価格(税込) |
---|---|---|---|
RZ(GR-DAT) | 4WD | 8速AT | 約4,830,000円 |
RZ(6MT) | 4WD | 6速iMT | 約4,480,000円 |
※以前存在したエントリーモデル「RS」は、2024年のマイナーチェンジに伴い廃止されました。
特別モデル:GRMNヤリス
GRヤリスをベースに、さらなる高性能化を図った限定モデル「GRMNヤリス」も存在します。
モータースポーツの現場で培った技術を投入し、軽量化や剛性強化、専用装備の追加などが行われています。
GRヤリスは、日常のドライブからサーキット走行まで幅広く対応できる、トヨタのスポーツカー開発の粋を集めた一台です。

GRヤリスのエクステリアデザイン
トヨタ「GRヤリス」のエクステリアは、世界ラリー選手権(WRC)での勝利を目指して開発されたことから、機能性とデザイン性を高次元で融合させた特徴的なスタイルを持っています。
以下に主なポイントを詳しくご紹介します。
フロントデザイン
- スチールメッシュのロアグリル
フロントのロアグリルには、薄型・軽量でありながら高い強度を持つスチールメッシュが採用されています。これにより、冷却効率の向上と飛来物による損傷への耐性が強化されています。 - 分割構造のフロントバンパー
バンパーのロアサイドには分割構造が導入されており、万が一の破損時にも交換作業が容易で、修復費用の低減につながります。 - 3灯式フルLEDヘッドランプ
鋭い眼光を思わせる3灯式フルLEDヘッドランプは、スポーティな印象を与えるとともに、優れた被視認性を確保しています。
サイドビュー
- ワイド&ローのプロポーション
全幅1,805mm、全高1,455mmのワイド&ローなスタンスは、空力性能の向上と安定した走行性能を実現しています。 - 軽量素材の採用
ルーフにはカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)、ボンネットやドアパネルにはアルミニウムが使用されており、車両の軽量化と低重心化に寄与しています。
リアデザイン
- 一文字型のLEDテールランプ
リアには一文字に連なるLEDテールランプが採用されており、後続車からの視認性と存在感を高めています。 - リアロアガーニッシュの開口部
リアバンパー下部には開口部が設けられており、床下の空気を効率的に排出することで空気抵抗を低減し、操縦安定性の向上とマフラーの熱排出に貢献しています。
ホイールとタイヤ
- 18インチ鍛造アルミホイール(BBS製)
RZ“High performance”グレードには、軽量で高剛性なBBS製の18インチ鍛造アルミホイールが標準装備されています。 - 18インチ鋳造アルミホイール(ENKEI製)
RZグレードには、ラリーイメージを強調したENKEI製の18インチ鋳造アルミホイールが標準装備されています。
ボディカラー
GRヤリスには、エモーショナルレッドやプレシャスメタルなど、スポーティさと高級感を兼ね備えたボディカラーがラインアップされています。
GRヤリスのエクステリアは、モータースポーツで培われた技術とデザインが随所に反映されており、走行性能と美しさを両立させた一台となっています。

GRヤリスのインテリアデザイン
トヨタ「GRヤリス」のインテリアは、モータースポーツのノウハウを活かし、ドライバー中心の設計が施されています。
以下に主な特徴を詳しくご紹介します。
シートと素材
- プレミアムスポーツシート(RZ“High performance”グレード)
ウルトラスエード®と合成皮革を組み合わせたシートで、優れたホールド性と高級感を兼ね備えています。また、除電機能を持つスタビライジングプラスシートを採用し、車体の帯電量を軽減して安定性を向上させています。 - スポーツシート(RZ・RCグレード)
ファブリック素材のシートで、スポーツ走行時のサポート性能に優れています。ヘッドレストにはGRのブランドロゴが施され、スポーティな印象を強調しています。
コックピットと操作性
- 12.3インチデジタルメーター
新型では、12.3インチのデジタルメーターを採用し、視認性と情報表示の充実を図っています。また、インストルメントパネルの高さを50mm低くし、前方視界を改善しています。 - ドライバー中心の設計
ステアリングホイールやシフトレバーなどの操作系は、ドライバーの手の届く範囲に配置され、操作性を高めています。また、運転席の着座位置を25mm低く設定し、スポーツ走行時の一体感を向上させています。
インフォテインメントと快適装備
- 8インチタッチスクリーン
センターコンソールには8インチのタッチスクリーンを配置し、ナビゲーションやオーディオなどの操作が可能です。スマートフォンとの連携機能も備えています。 - デュアルゾーンエアコン
運転席と助手席で独立して温度調整が可能なデュアルゾーンエアコンを採用し、快適な車内環境を提供します。
デザインと質感
- カーボン調パネルと赤いアクセント
インテリアにはカーボン調のパネルや赤いステッチが施され、スポーティな雰囲気を演出しています。これにより、視覚的にも走行性能の高さを感じさせるデザインとなっています。 - シンプルで機能的なデザイン
全体的に無駄を省いたシンプルなデザインで、操作性と機能性を重視したレイアウトが特徴です。これにより、ドライバーは運転に集中しやすい環境が整えられています。
GRヤリスのインテリアは、スポーツ走行を念頭に置いた設計と、日常使いでの快適性を両立させた空間となっています。
GRヤリスの走行性能
トヨタ「GRヤリス」は、世界ラリー選手権(WRC)での勝利を目指して開発された本格スポーツカーであり、その走行性能は市販車としては異例の高水準を誇ります。
以下に、主要な走行性能の特徴を詳しくご紹介します。
パワートレインとトランスミッション
- エンジン
専用開発の1.6L直列3気筒ターボエンジン「G16E-GTS」を搭載し、最高出力224kW(304PS)、最大トルク400Nmを発揮します。このエンジンは、軽量・コンパクトながら高出力を実現し、WRC参戦車両にも通じる性能を持ちます。 - トランスミッション
6速iMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)に加え、2024年モデルからは新開発の8速AT「GR-DAT(GAZOO Racing Direct Automatic Transmission)」が追加され、より多くのドライバーがスポーツ走行を楽しめるようになりました。
駆動方式「GR-FOUR」
GRヤリスは、トヨタ独自開発のスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」を採用しています。
このシステムは、電子制御多板クラッチを用いたアクティブトルクスプリット方式で、前後輪へのトルク配分を瞬時に制御します。
また、フロントおよびリアにトルセン®LSDを装備し、コーナリング時のトラクションを確保しています。
サスペンションとシャシー
- サスペンション
フロントにはマクファーソンストラット式、リアにはダブルウィッシュボーン式を採用し、専用のサスペンションジオメトリを設定。これにより、高い応答性とグリップ力を確保しています。 - シャシー強化
ボディとサスペンションの締結部に高剛性ボルトを採用し、ステアリング応答性と直進安定性を向上させています。また、ショックアブソーバーの減衰力や電動パワーステアリングの制御も最適化され、ドライバーとの一体感を高めています。
走行モードと制御システム
GRヤリスには、走行状況に応じて選択可能な3つの4WDモードが用意されています。
- NORMALモード
前輪60:後輪40のトルク配分で、日常走行に適した軽快な走りを実現。 - SPORTモード
前輪30:後輪70のトルク配分で、リア寄りの駆動力によりスポーティな走行が可能。 - TRACKモード
前輪50:後輪50のトルク配分で、サーキット走行などの高負荷時に最適なバランスを提供。
さらに、VSC OFFスイッチを短押しすることで「EXPERTモード」が作動し、ドライバーの操作を優先しつつ、車両挙動が大きく乱れた場合には制御が介入します。
モータースポーツとの関係
GRヤリスは、WRC参戦を前提としたホモロゲーションモデルとして開発され、実際のラリー競技で得られた知見がフィードバックされています。また、GRMNヤリスなどの特別仕様車も登場し、さらなる高性能化が図られています。
GRヤリスの走行性能は、日常のドライブからサーキット走行まで幅広く対応できる、トヨタのスポーツカー開発の粋を集めた一台です。
GRヤリスの安全性能
トヨタ「GRヤリス」は、モータースポーツ直系のスポーツカーでありながら、先進の安全技術を多数搭載し、日常のドライブでも高い安全性を提供します。
以下に、主な安全性能の特徴を詳しくご紹介します。
Toyota Safety Sense(TSS)
GRヤリスには、トヨタの先進予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」が標準装備されています。これにより、多様な運転シーンでドライバーをサポートします。
- プリクラッシュセーフティ(PCS)
前方の車両や歩行者、自転車運転者、自動二輪車を検知し、衝突の可能性がある場合に警報を発し、必要に応じて自動ブレーキを作動させます。 - レーントレーシングアシスト(LTA)
車線を認識し、車線中央を維持するようステアリング操作を支援します。 - レーンディパーチャーアラート(LDA)
車線逸脱の可能性がある場合に警報を発し、ステアリング操作をサポートします。 - レーダークルーズコントロール
先行車との車間距離を保ちながら、設定した速度での走行を支援します。 - オートマチックハイビーム(AHB)
対向車や先行車の有無に応じて、ハイビームとロービームを自動で切り替えます。 - ロードサインアシスト(RSA)
道路標識を認識し、ディスプレイに表示することで、標識の見逃しを防ぎます。 - 発進遅れ告知機能
信号の変化や先行車の発進に気づかない場合に、警報で注意を促します。
これらの機能により、GRヤリスは「セーフティ・サポートカーS〈ワイド〉」に該当し、高齢者を含むすべてのドライバーの安全運転を支援します。
衝突回避支援機能
GRヤリスは、交差点や低速走行時の事故リスクを低減するための機能も充実しています。
- 交差点右折時の対向直進車・右左折時の横断歩行者・自転車運転者検知機能
交差点での右折時に直進してくる対向車や、右左折時に横断してくる歩行者や自転車運転者を検知し、警報と自動ブレーキで衝突回避を支援します。 - 出会い頭時の車両・自動二輪車検知機能
交差点での出会い頭の事故リスクを低減するため、交差する車両や自動二輪車を検知し、警報と自動ブレーキで対応します。 - 緊急時操舵支援機能
衝突の可能性が高く、ドライバーが回避操作を行った際に、ステアリング操作を支援し、車両の安定性と車線逸脱の抑制を図ります。 - 低速時加速抑制機能
低速走行時に前方の歩行者や車両を検知し、アクセルペダルの踏み込み過ぎによる急加速を抑制します。
その他の安全装備
GRヤリスには、以下のような安全装備も搭載されています。
- ブラインドスポットモニター(BSM)
後側方の死角にいる車両を検知し、ドアミラーのインジケーターでドライバーに知らせます。 - リヤクロストラフィックオートブレーキ(RCTAB)
後退時に左右後方から接近する車両を検知し、警報と自動ブレーキで衝突回避を支援します。 - 車両安定性制御装置(VSC)
滑りやすい路面での車両の安定性を確保します。 - ヒルスタートアシストコントロール(HAC)
坂道発進時の後退を防止します。 - タイヤ空気圧警告システム
タイヤの空気圧低下を検知し、ドライバーに警告します。
これらの装備により、GRヤリスはスポーツカーとしての走行性能だけでなく、日常の安全性も高いレベルで実現しています。
GRヤリスは、走行性能と安全性能を高次元で融合させたスポーツカーです。
GRMNヤリス
トヨタ「GRMNヤリス」は、GRヤリスをベースに、モータースポーツの現場で培った技術とノウハウを注ぎ込んだ、500台限定のハイパフォーマンスモデルです。
「GRMN」は「GAZOO Racing tuned by the Meister of Nürburgring」の略で、ニュルブルクリンクで鍛え上げられたことを意味します。
主な特徴
エンジンとパワートレイン
- エンジン
1.6L直列3気筒ターボエンジン「G16E-GTS」を搭載し、最高出力272PS、最大トルク390Nmを発揮。GRヤリスのRZ“High performance”と比較して、トルクが20Nm向上しています。 - トランスミッション
1速から4速までのクロスレシオギアとローファイナルギアを採用し、エンジンのパワーバンドを有効に活用。ギア素材にはSNCM材を使用し、ショット処理を施すことで耐久性を向上させています。 - 駆動方式
GR-FOUR(電子制御4WD)を採用し、前後輪のトルク配分を最適化。フロントおよびリアにトルセン®LSDを装備し、コーナリング時のトラクションを確保しています。
ボディとシャシー
- 軽量化と剛性強化
ボディのスポット溶接を545点追加し、構造用接着剤を12m延長することで剛性を大幅に向上。また、ルーフやボンネットには綾織CFRP(カーボンファイバー強化プラスチック)を採用し、約20kgの軽量化を実現しています。 - サスペンション
専用チューニングが施されたサスペンションにより、ハンドリング性能と乗り心地の両立を図っています。
特別仕様パッケージ
CIRCUIT PACKAGE
- 特徴
BBS製18インチ鍛造ホイール、ビルシュタイン製減衰力調整式ショックアブソーバー、カーボン製リアスポイラーなどを装備。サーキット走行に特化した仕様となっています。
RALLY PACKAGE
- 特徴
GRショックアブソーバー、ショートスタビライザーリンク、アンダーガードセット、ロールバーなどを装備。ラリー走行を想定した装備が充実しています。
アップデート&パーソナライズプログラム
- アップデートプログラム
モータースポーツの現場で得られた技術を、パーツ追加やソフトウェアアップデートを通じて提供。エンジン強化や駆動制御の改善などが予定されています。 - パーソナライズプログラム
ドライバーの運転データを分析し、ステアリング制御やエンジン制御、駆動配分などを個々に最適化。自分の手足となって動くような、ベストマッチする相棒へと仕立てることが可能です。
主要諸元(GRMNヤリス)
項目 | 内容 |
---|---|
エンジン | 1.6L 直列3気筒ターボ(G16E-GTS) |
最高出力 | 272PS |
最大トルク | 390Nm |
トランスミッション | 6速iMT(クロスレシオ+ローファイナル) |
駆動方式 | GR-FOUR(4WD) |
車両重量 | 約1,250kg(パッケージにより異なる) |
乗車定員 | 2名(リアシートレス) |
生産台数 | 500台限定 |
価格帯 | 約731万円〜(日本国内) |
GRMNヤリスは、モータースポーツで培われた技術と情熱が凝縮された、まさに「走るための道具」としての究極のホットハッチです。
その希少性と高性能から、コレクターズアイテムとしての価値も高まっています。
さいごに
GRヤリスとGRMNヤリスは、ただのスポーツカーではありません。
WRCという過酷な舞台で培われた技術と情熱が注ぎ込まれた、トヨタの“本気”が詰まったクルマです。
GRヤリスは日常でも楽しめる本格スポーツ性能を、GRMNヤリスは限られた人だけが味わえる究極のドライビング体験を提供します。
モータースポーツの魂を日常に感じたい、そんなあなたにとって、この2台はきっと最高の相棒となるでしょう。
あなたも一度、そのステアリングを握ってみませんか?